一.染空(そめぞら) 夕暮れどきでしょうか。陽を受けて”もみぢ”がひろがり降る光景は、まさに自然美の極致でしょうか。遭遇したら誰もが感動し、感謝の想いが詩歌となりそうですね。やはり日本人にとって秋といえば紅葉なんですね。最初に紹介した良寛草木のうた『はなのひもとく』には68種類430首の歌が載っています。”もみぢ”が最多で63首、次の”萩”は38首です。良寛さんがいかに好かれたかがわかります。『もみぢ葉の 錦の秋や 唐衣』は、秋の深まりと色鮮やかさを錦地と唐衣に見立て賛美されています。また、『もみぢ葉の 降りに降りしく 宿なれば 訪ね来む人も 道まどふらし』と詠われています。私の庵を訪れる人が、絶え間なく降り続ける落ち葉で道を見間違えるのではと気遣っておられます。さらに、円通寺覚樹庵跡には詩碑と良寛椿がありますが、『形見とて 何か残さむ 春は花 夏ほととぎす 秋はもみぢ葉』は有名ですね。形見に何を残したらよいだろう。やはり”花”と”不如帰”に”もみぢ葉”であろう。この自然の宝物に私を想い出してほしいものよ。良寛さんの辞世の歌に『うらを見せ おもてを見せて 散るもみぢ』があります。良寛さんは最愛の貞心尼にいだかれて、この歌を最後につぶやき穏やかにお亡くりになったそうです。
一. 霞皿(かすみざら) 夕暮れ時の雲が美しく彩られているイメージが伝わります。霞皿はぴったりな命名ですね。輝く雲の紅と降り落ちる葉の紅が重なりあう臨場感あふれる作品だと思います。
一. あとがき このシリーズも最終となりました。当初は大変なことをお受けし、不安が先行しました。ただ、良寛さんを想う絶好の機会と捉え、皆さんにも励まされながら続けることができました。作品に相応しい詩歌が選定できたか些か疑問で、的外れた点はご容赦頂ければ幸いです。投票結果は最近お聞きし、いろいろな視点があり一概には言えませんが、皆さんの想いは十分伝わったのではないでしょうか。最後になりましたが、小説『竹やぶの向こう側』に、現代でも人生を導いて下さる良寛さんを実感させられました。この6か月間、投稿するたびに良寛さんを想ってきました。自然体で純粋に没頭し、向上心をあきらめず継続できそうな”好きなこと”があるならば、その人は果報者に違いありません。結果として、必ずや天職域に近づき頂上を極めることができると同時に、世の為人の為になるのではないかと勝手に思っている次第です。長い間、読み続けて頂きありがとうございました。感謝を申し上げます。ご意見を頂ける機会があれば幸いです。 良寛椿の会 会員 早川正弘