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椿
玉のつゆ ~貞心尼抄~(四)   米子市 大原啓道
2025/12/14
広げよう応援の輪

 越後の冬は永い。鉛色の厚い雲が、毎日、空をおおっている。滅多に、お日様を、仰ぐことがない。時々、訪ずれる、良寛さまのお生まれになった出雲崎などは、荒波が音をたてて浜に打ちつけ、さらに、わびしい空気が漂っている。佐渡が見える日は、ほとんどない。

 それでも、佐渡の金山へ向かうお役人が、江戸から来られる時には、街中に賑わいがある。また、北前船がやって来て、北の国々の荷を下ろした後などは、船の荷役や、船乗り達が、町へ繰り出すから、しばらくは、人の往来も多い。花街のお女郎たちも、少しは、実入りが増えるのか、たまには、心なしか、明るい顔をしている女もいる。

 そんな暗い越後に、春の兆しが聞こえ始めるのは、やはり、水音だ。雪解け水が裏山から流れ出て、町の小川を、勢いよく流れてくる。きれいな水を見ると、わたしの心も、洗われるように感じる。

 きっと、良寛様のお住まいの庭の白い寒椿も咲き始めている頃だろう。月が明ければ、お目にかかれる日も来る。もう少しの、辛抱だ。春よこい、と毎朝、仏様にお願いする時も、うれしくなる。