円通寺吟行 №5
白無垢の花に重たき沙羅の雨
梅雨の頃、いつも倉敷藤戸寺の夏椿(沙羅の花)が新聞で紹介される。
玉島円通寺にも夏椿の花が咲いている。令和2年6月梅雨の時期、円通寺に
参拝して本堂前の夏椿の花に出会った。樹高は3メートル余り、雨に濡れた
白い花は印象的だった。一日花に降る雨に無情を感じた。この句はその時に
詠んだもの。今まで開花時期に参拝しなかったので気が付かなかった。
今年は梅雨の晴れ間の6月17日期待の花に花に会った。
俳句歳時記に「6~7月直径5~6センチの椿に似た白色の五弁花を開く。
朝咲いて夕方に落ちる一日花。沙羅(しゃら)の別名がある」と解説している。
日本の仏教寺院ではインドの沙羅双樹の代用としてナツツバキが植えられている
という。夏椿の花言葉は『はかない』と『愛らしい』だそうだ。
今年は花の姿に特に注目した。<沙羅落下して白汚れなかりけり 稲畑汀子>
夏椿の花は上品で美しい。柔らかそうでふっくらとした花弁、五弁の先端は少し
縮れて金色の蕊を包んでいる。ふんわり感が増す。じっと眺めているとその愛く
るしさに気持ちが安らぐ。
住職さんにおたずねしたら「沙羅は中国観音霊場のシンボルフラワーとして
植えてある。ずっと以前に数本植えたが生育不良で、大きく育っているのは、
良寛堂の裏と本堂前にある二本だけである」と話してくださった。
円通寺は折々訪ねて、四季の草花を観賞する私の好きな吟行地。
夏椿の花に会える楽しみが一つ増えた。
安福利平