良寛さんに漢詩『草庵雪夜作』がある。直筆を写真で撮った物を、かつてある本で見た。その文字からくるものに、何故か、こころひかれた。ただ、残念ながら、漢詩の素養のない私には、読み下すことはできなかった。
それでも、ありがたいことに、漢字は表意文字だ。単語を見ていると、何となく意味は伝わった。
『七十有余年 人間 看破』などからは、最晩年の良寛さんの心境を表しているものとわかる。また、『往来 深夜雪 線香』などからは、住まいする当時の草庵のたたずまいが おぼろげに伝わる。何よりも、『草庵雪夜作』という題が、良寛さんの感懐そのものだ。
私は、ある時、このページを切り取った。そして、渋い色の額に入れた。この漢詩にぴったりと来ると感じた。それを、寝室の入口の壁に掛けた。自然、毎朝、毎夕、見る。やがて、その漢詩は、わがこころに沁みて来る様になった。
日々見ながら、自然とこころに満ちてくるものを、短歌にしたためた事があった。
良寛の言の葉 沁みる歳となり 日々見つめる「草庵雪夜」
令和元年、倉敷市玉島に「良寛椿の会」が発足した。それを記念して、会が、短歌全国公募をされた。その小さな記事を、全国良寛会の『良寛だより』で、私は、たまたま見た。 その時、一首を、応募した。何ヶ月かして「残念ながら」という丁寧な知らせが届いた。
その公募に昨年も応募した。それが先に書いた短歌である。先日入選したという知らせを受けた。二席だった。驚いた。良寛さんの良縁を得たのであろう。ありがたく受賞した。